◆アドバンス・ケア・プラニング(ACP)記録・共有ツール
アドバンス・ケア・プランニング(通称ACP)は、ひと言でいうと**「もしもの時に備えて、自分が望む医療やケアについて、前もって考え、大切な人たちと話し合っておくこと」**です。
日本では「人生会議」という愛称で呼ばれており、決して終末期医療や延命治療のことだけを話し合うものではありません。あなた自身が、最後まで自分らしく生きるために行う、とても大切なプロセスです。
なぜ「人生会議」が必要なの?
人は誰でも、突然の病気やケガで、自分の意思を伝えられなくなる可能性があります。ある調査では、命の危険が迫った状態になると、約7割の方が自分で医療やケアを決められなくなると言われています。
もしあなたが意思表示できなくなった時、医療やケアについての難しい決断は、ご家族に委ねられることになります。その時、あなたの価値観や希望が分からなければ、ご家族は「本当にこれでよかったのだろうか?」と悩み、心に大きな負担を抱えてしまうかもしれません。
「人生会議」を行っておくことで、次のようなメリットがあります。
- あなたの意思が尊重される: あなたが望むかたちで、医療やケアを受けられる可能性が高まります。
- 家族の負担を軽くする: あなたの気持ちが分かっていれば、家族は安心して決断を下しやすくなります。
- より良いケアにつながる: 医療・介護チームも、あなたの価値観を理解し、あなたに合った最適なサポートを提供しやすくなります。
「人生会議」では、どんなことを話し合うの?
決まった議題はありません。まずは、あなた自身のことから考えてみましょう。
ステップ1:自分自身で考えてみる
- あなたが大切にしていることは何ですか?
- 家族や友人と過ごす時間、趣味、仕事、ペットとの暮らしなど。
- これからどんな風に生きたいですか?
- 「最期まで自宅で過ごしたい」「痛みや苦しみはできるだけ和らげてほしい」「好きなものを食べ続けたい」など。
- 逆に、どのようなことは望まないですか?
- 「たくさんの管につながれて生きるのは避けたい」「意識がない状態で延命治療はしてほしくない」など。
ステップ2:大切な人と話し合ってみる
ステップ1で考えたことを、ご家族や信頼できる友人、かかりつけ医、ケアマネジャーなどと共有しましょう。
- あなたの考えを率直に伝える
- もしもの時、誰に判断を任せたいか(代理決定者)を決めておく
- 医療やケアについての希望を具体的に話し合う
- 心臓マッサージや人工呼吸器などの延命治療を望むか
- もし食事ができなくなったら、胃ろう(お腹から栄養を入れる管)を希望するか など
ステップ3:話し合った内容を共有し、記録する
話し合った内容は、忘れてしまったり、解釈がずれたりしないように、書面に残しておくことが大切です。エンディングノートや事前指示書などを活用するのも良いでしょう。
「人生会議」のポイント
- 元気なうちから始めよう: 判断力がしっかりしている元気な時から、少しずつ考えておくことが理想です。誕生日や家族が集まる機会などをきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
- 繰り返し話し合おう: 人の気持ちは、時間や状況によって変化するものです。「一度決めたら変えられない」というものではありません。何度も繰り返し話し合い、その都度、今の気持ちを共有することが大切です。
- 無理強いはしない: このような話し合いは、とてもデリケートなものです。ご家族などに話を持ちかける際は、相手の気持ちにも配慮しましょう。「考えたくない」という気持ちも尊重することが重要です。
「人生会議」は、あなたとあなたの大切な人が、未来について考え、より良い時間を過ごすためのコミュニケーションの機会です。ぜひ、この機会にあなた自身の「これから」について考えてみませんか。